Column

2024.08.27 update
これまでも、これからも、誰もが集い語り合える場所

居垣 裕芳軽井沢高原教会 牧師

いつでも帰って来ることのできる教会の牧師として

軽井沢高原教会の牧師として着任したのは2008年春のこと。それまでは東京、神奈川の教会で牧師をしていたのですが、一旦区切りをつけるタイミングがあって先のことを考えていた矢先、この教会が、牧師を求めていることを知りました。ここには北原白秋や島崎藤村らによる「芸術自由教育講習会」を原点に誕生したという確固たる歴史があり、キリスト教思想家の内村鑑三との所縁もあり、日曜日の礼拝を含めて様々な役割を期待されていることもわかりました。それで思い切って移住し、お世話になることにしたのです。

実際に働いてみてユニークだと思ったのが「牧師館」の役割です。牧師館は一般的には牧師が居住する家や、牧師が執務をする書斎を指しますが、軽井沢高原教会においてはやや違う。この教会の歴史や活動を伝える場であり、また教会で挙式をされた方々が大切な一日を振り返るために訪れる再会の場所にもなるのです。

かつて宣教師に避暑地として見出された軽井沢には今でも多くの教会が点在しており、軽井沢高原教会にも教会めぐりを楽しむ観光客の方々がご見学にいらっしゃいます。その時は私も応対にあたり、色々なお話をさせていただきます。まさに思想や宗教にとらわれず、誰もが集い語り合える開かれた場所。この在り方を私は大変気に入っています。

木立の中に佇む「軽井沢高原教会」

軽井沢星野エリアで最も心に残っている「森を愉しみ、森を識る」体験とは

実を言うと、学生時代は農学部で林業を学んでいたので森については少しだけ知識があるのですが、軽井沢高原教会が立つ丘に広がる森は広葉樹と針葉樹が混じり合う針広混交林で、植生が豊富。色々な生き物たちに出会えます。

軽井沢高原教会では「キャンドルウェディング」と称する夜の挙式も行なっておりまして、ある晩、こんなことがありました。

いつものように司式していると、新郎新婦の様子がどことなく落ち着きません。参列客もざわついていて、主役がいる祭壇ではなく、それよりもっと上の方に注目している。祭壇の上には屋根の形に沿って大きく取ったガラス窓があり、その向こうには豊かな緑が広がっています。そこをムササビが飛んでいくのが見えたようです。軽井沢にいるムササビは大きくて、飛行シーンがダイナミックなんですよ。夜の教会は厳かな空気に包まれるものですが、この時は歓声もあがって和やかでした。

これからも星野エリアと共に祝福の場であり続ける

軽井沢星野エリアが110周年を迎えて改めて思います。軽井沢高原教会が丘の上で木洩れ陽を浴びながら佇んでいる景色が、これから先もずっと残っていてほしいと。

100年以上の歴史を持つこの教会は、三世代にわたり結婚式を挙げるなど、世代を超えて人と人との絆を紡ぎ愛されてきました。このエリアには新しい施設も増えましたが、その中で変わらず人々を祝福し、人々の心の拠り所たる重石のような存在であり続けたい。私たちは開かれた教会としての歴史と伝統を守りながら、いつでも皆さまをお迎えいたします。

内村鑑三が名付けた「星野遊学堂」の看板の前にて
Profile

居垣 裕芳軽井沢高原教会 牧師

1971年神奈川県生まれ。カンバーランド長老キリスト教会高座教会にて洗礼を授かる。玉川大学農学部、東京基督神学校(現東京基督教大学)卒業後、カンバーランド長老キリスト教会日本中会の教職者として、東京、神奈川の教会で牧師を務める傍ら、母校玉川学園高等部の礼拝で講師を務めた。‘08年より、軽井沢高原教会の牧師を務め、結婚式の司式にも取り組んでいる。